どんなときも部下の味方でいよう
「黒岩くんはいつも頑張ってくれてます」
ダメになりそうな私を、上司の言葉が救ってくれました。
レンタルビデオTSUTAYAの加盟店で働きはじめて1年くらいの20代前半のころ。
当時の私は、
店頭で日々発生するトラブルやクレーム対応にうんざりし、
さらには、毎日のように社長から怒られ、
「もう辞めたい」と考えていました。
実は、それまでに就いた仕事も、
怒られては辞める、を何度も繰り返していました。
そんな私がTSUTAYAを辞めなかったのは、
当時の上司の言葉があったからです。
私を厳しく怒る社長に対して、
「社長、黒岩くんはいつも頑張ってくれてます」
と言ってくれたのです。
私の味方をしてくれたその言葉が
嬉しくて嬉しくて、
仕事を続ける支えになりました。
しかし、私自身が上司になると、
「辞めたい」と思う原因となった社長のような私になっていきます。
部下に対して、
「いうこと聞かない!」
「使えない!」
「やる気がない!」などと考え、
気に食わないと
「やる気がないんやったら辞めてしまえ!」と暴言を吐く始末です。
上司の言葉に救われた私なのに・・・
不思議なものです。
多くのことを学び、経験をした今ならよくわかります。
ちょっと一緒に考えてみましょう。
小さな子どもに50センチほどの棒を渡すと、
子どもはどうすると思いますか?
その棒であなたが叩かれるのです。
私たちの本能は、力を手に入れると使いたくなるのです。
自転車に乗ると危ないスピードで走ったり
原付に乗ると、もれなく60キロを出したり
そんなふうに
私自身が、小さな子どもと同じだったのです。
店長という権力(棒)を手にしてしまったがために、
権力(棒)を振り回し部下を叩いていたのです。
とても未熟でした。
その未熟さに気づかせてくれたのが、
TSUTAYA五つ星店長コンテストで日本一になったことです。
コンテストは半年にわたりスタッフのテストや店舗調査を行い、
ミシュランガイドのように店長に星をつける制度でした。
コンテストで
五つ星を獲得した店長は全国でたったの二人、
その二人ともが私の部下だったのです。
その他の店長たちも全員四つ星。
圧倒的な成果、
最高の栄誉なはずなのに、
部下の誰も喜んでいませんでした。
むしろ、
四つ星の店長が
五つ星になれなかったことを謝罪にくる始末です。
なにかが間違っている。
そう気づかせてくれるには、充分なできごとでした。
そうやって芽吹いたのが、後々に「太陽のマネジメント」と呼ばれる手法でした。
そして、太陽のマネジメントによる組織づくりは、
TSUTAYA最優秀店舗を決める全国大会にてもグランプリを獲得!
さらには従業員満足度調査でも日本一を獲得します。
同じ日本一でも、
意味のまったく違う日本一でした。
だれも喜んでくれなかった悲しみで涙した日本一。
みなが嬉しさで涙あふれる日本一。
その違いを生み出したのは、「どんなときも部下の味方」です。
かつての私は、
部下が悪い!
部下のせいで!
と部下を敵対視していました。
だから、
権力と正論の暴力でやっつけようとしていたのです。
部下は敵ではありません。大事な仲間です。
それに気づけたことが最高のチームへの一歩になったのです。
部下が「いうことを聞かない」のは、
私が部下の言うことを聞かなかったからです。
「つべこべ言わずにやれ!」などと
無理矢理に仕事をさせていました。
部下が「使えない!」のではありません。
私が「使えない!」上司だったのです。
部下が「やる気がない!」前に、
私の部下を育てる「やる気がない!」だったのです。
そんなふうに考えを新たにできたのは、
私が社長に怒られてるにも関わらず、
私の味方をしてくれた当時の上司を思い出したからです。
「どんなときも部下の味方」と部下を応援できると、
部下があなたを応援してくれるのです。